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執筆者の写真Mayumi Robertson

英国のこだわりワイナリー Tillinghamナチュラルワイン

更新日:2020年10月27日

Sussex Vinoのブログへお越しくださり、ありがとうございます!

このブログでは、イングリッシュワイン ー特にイングリッシュ・スパークリングワイン(ESW)ー と、イギリスのワイナリーについてご紹介しています。

英国のワイナリーの多くはSussex, Kent, Hampshireに集中しています。これらの地域では農地からワイン用ぶどう畑への造成が進んでおり、新しい若いワイナリーも次々と誕生しています。ほとんどのワイナリーはフレンドリーでオープン。これから10月にかけては収穫時期と重なるので、稼働するワイナリーを見学できるチャンスです。


前々回、ワイナリーと併せて立ち寄る観光スポットとしてご紹介したRye(ライ村)。


中世の街並み残る、イギリスらしい村です。その近くのワイナリーとして、前回は2件のワイナリーをご紹介しました。

  • どのワインをとってもバランス良くハズレのないGusbourne ガズボーン(Kent)

  • 家族経営の癒し系オーガニックワイナリーOxney オックスニー(East Sussex)

今回は、そのOxneyから車で15分位で行けるTillingham(ティリンガム)というワイナリーについてご紹介します。


Tillingham ティリンガム (East Sussex) www.tillingham.com


電車の場合: 最寄り駅Rye 駅からタクシーで所要時間10~15分。

ロンドンから電車の本数が多いAshford International駅からはタクシーで約35分。

このワイナリーはまだ新しいのですが、とにかくこだわりがスゴイ!

中世から続く広い農場を買い取り、そのうちの20エーカー(約10 ha)を2017年にワイン用ブドウ畑に造成。自社畑のブドウは、今年初めて収穫を迎えます。つまり、2020年ヴィンテージのワインが“自社畑のブドウによる”Tillingham最初のワインとなります。

Tillinghamとしての最初のワインは、”Traditional Method 2017“というスパークリングワイン(ESW)が既にリリースされています。これは、英国南部の栽培農家から買い付けたブドウによって造られたものです。


こだわりについてですが、共同オーナーであり醸造家のベン・ウォルゲート氏にはブドウ栽培やワイン造りに明確なビジョンがあるようです。それは、人間が手を加える部分を極力抑えて、なるべく自然の力に任せたブドウ栽培やワイン造りをすること。化学肥料や除草剤などを使用しないオーガニックやビオディナミ農法によるブドウ栽培に加え、醸造の際にもなるべく無添加でワインを造るという姿勢、つまりナチュラルワインを作るということです。気候的に恵まれた地域ではないだけに、イギリスでオーガニックやビオディナミを貫くにはかなりの覚悟が必要です。

通常のワイン製造過程では、アルコール発酵後に液体中に残る微細な固形物を清澄剤を使って凝固させてから濾過します。ワインの透明度を上げるために、濁りの素になる固形物(不純物)を取り除くためです。一般的に、濁っているより透明なワインの方が消費者に好まれるし、品質も安定するからです。

この清澄剤として、卵白など動物性たんぱく質が使われたりします。自然に任せるナチュラルワイン醸造家は、この清澄剤を使わないので厳格な菜食主義者(ビーガン)にもOKなワインが出来上がります。仕上がったワインは濁った色調になるものの、残った固形物がワインの味を変化させ続けてワインに複雑さを与えるとも言われます。またナチュラルワインは、その畑の個性をワインに反映させやすいと言う人もいます。反面、無添加ゆえに発生するナチュラルワイン特有のアロマによって、どのナチュラルワインも似通ったスタイルになるという人もいます。


Tillinghamが造るワインは、スパークリングもスティル(泡なし)ワインも清澄・濾過を行いません。さらに、アルコール発酵に使う酵母も自然酵母のみを使用し、酸化防止剤(二酸化硫黄)も基本的に無添加です(若干の例外あり)。


さらなるこだわりは、アルコール発酵や熟成の際に使う容器にも見られます。ステンレス製タンク、コンクリート製タンク、通常のフランス産オーク樽に加えオーストリア産オーク樽、さらにジョージアからわざわざ取り寄せた素焼きの壺(クヴェヴリ)まで各種取り揃えて様々な試みをしているのです。私もまさか、イギリスでクヴェヴリに遭遇するとは思いませんでした。非常に革新的なワイナリーです。

ステンレスタンク
細長いオーストリア産オーク樽
土中のクヴェヴリ

ところで、ナチュラルワインはヘルシーなイメージで最近人気が高いワインです。特にスパークリングワインは、Pet Nat(ペットナット: Pétillant Naturel)と呼ばれ、アルコール度数低め(11%前後)、添加物・動物性たんぱく質不使用、余分な糖分なしという点が受けて、2~3年前からお洒落なロンドナーの間で人気があります。


そんな、時代の波に乗るこだわりワイナリーTillinghamですが、正直な話、難点もあります。全てが他のワイナリーより高額!

大抵のワイナリーツアーは、一人£20(約¥3,000)で1時間半から2時間が平均的ですが、こちらのワイナリーでは一人£35(約¥5,000)で1時間程度。試飲できるワインが5種類あるとはいえ、ワイナリー施設がまだ完備していない状態であり、これはやはり高い (個人的見解)。ワインの価格も高めという印象です。


Tillinghamでは今年、ワイナリー内にホテルやレストラン、ピザ窯のあるアウトドアのピザ・ガーデンなど各種施設をオープンしたばかり。それらの投資が個々の金額に反映されているのかも知れません。今後、全ワインの質が更に向上すれば、納得して払えるのかも…。


ナチュラルに作るには確かに手間暇=コストがかかります。が、若い産業であるイギリスのワイナリーの多くは、有機栽培やそれに近い、環境にやさしいブドウ栽培をしている所がほとんどです。そして多くのワイナリーは、Tillingham同様、あえてオーガニックやビオディナミ農法の認定を受けません。認定を受けて規則に縛られるより、自由裁量を保持しながら品質を向上させる道を選ぶ所が多いようです。


ここでは、ツアーに参加しなくても、ピザガーデンでグラスワインを頼むことは出来ます。また、併設のショップからは眼下に広がるブドウ畑の景色が眺められ、心地よい風と共に解放感ある空間になっています。ワインに関しては、10種類以上の品種でワインを造っているので色々試すと楽しいと思います。


もう一つの難点は、ナチュラルワインに共通しているのですが、一度ボトルを開けたらすぐ飲まないと酸化しやすい点。コルクを開けたら、あっという間に劣化する可能性があります。

このワイナリーの私的お奨めワインは、ピノ・ブラン 2018。

アルコール発酵の際にクヴェヴリ、オーク樽、ステンレス製タンクを使ったワインを1/3ずつブレンドしたもので、複雑な風味に仕上がっています。シトラスとスパイスのアロマに酸味のバランスが良く、フレッシュなのに深みのあるワインです。

機会があれば、是非お試しいただきたい一本です。


お奨めのピノ・ブラン(左)

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